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2007年10月09日

027 アルゼンチンのアンタッチャブル

こんにちは。
このタイトルだけ見ると、「アルゼンチンのお笑い芸人のことか?」と思われる方もいるかもしれませんが、ボクシングの話題です(--;)
前の記事でガッツ石松っつぁんの話も出たことですし、あさって(2007年10月11日)は日本人同士による、注目のボクシングの世界戦もあるということで・・・

今日は僕の大好きな、ヘンなボクサー(失礼)を紹介します。
アルゼンチンが誇る超技巧派変則ボクサー、ニコリノ・ローチェ(Nicolino Locche)です。スペイン語の実況を聞いてみると、「ニコリーノ・ロッチェ」と発音しているようです。


アルゼンチンと言えば、ここ沖縄とも深い関わりがありますね。僕の親戚にはアルゼンチン移住者がいますし、友人にもアルゼンチン関係者が何人かいます。
もうかれこれ10年以上前、シルビーナという親戚の女の子(同い年)が研修で沖縄に来て、実家に約1ヶ月半宿泊してもらったことがあります。彼女の母国語はスペイン語ですが、僕はスペイン語が話せないので、会話は片言の英語と日本語とのチャンポンでした。コミュニケーションに悪戦苦闘したことが懐かしいです。ちょっとした騒動がいくつかありましたが、今ではとても良い思い出です。
シルビーナは数年前にもこちらに遊びに来てましたが、研修後に結婚して子宝にも恵まれ、幸せな家庭を築いているとのことです。


・・・と、思いっきり脱線しましたが、本題に入りましょう。


ニコリノ・ローチェは1960年代後半から1970年代前半に活躍した世界ジュニアウェルター級王者で、日本では藤猛の一発必倒の左右フックを大型扇風機に変えた戴冠試合で知られています。

ローチェのボクシングスタイルは、ズバリ、ディフェンスです。ディフェンス中心のボクサーは地味に見える傾向があるため、日本では過小評価されているかもしれません。
しかしディフェンスとは言っても、ただガードを固めたり逃げたりするのではなく、試合の流れの中で相手の攻撃を様々な方法で巧みにかわし、自分の攻撃につなげるための効果的・積極的ディフェンスです。

ローチェの特異で卓越した防御術は世界レベルで高い評価を受けており、自身も2005年に国際ボクシング殿堂(IBHOF)入りを果たしました。

・・・ということは、大げさに言うとモハメド・アリやシュガー・レイ・ロビンソン、シュガー・レイ・レナード、ロベルト・デュラン等、歴史的名王者達と同じ扱いです(^^;)
なお、日本人の殿堂入りボクサーはファイティング原田だけです。
日本においてローチェはマイナー王者の部類に入るかもしれませんが、世界的には超一流王者として認められていると言えます。

そのあまりにもすばらしいディフェンス技術のため、本人についたあだ名が「The Untouchable(アンタッチャブル)」。スペイン語では「El intocable(イントカブレ)」。誰も本人に触ることすらできないという意味です。

ボクシング総合データサイト「BOX REC」によると、通算成績は136戦117勝4敗14分1無効試合(!)で、KO勝ちは14試合のみです(^^;;)
数字が示すとおり一発の破壊力はありませんが、逆に打たれることもなく、怪我によるTKO(棄権)負けはあっても完全なKO負けはありません。

王者・強豪との対戦は、アントニオ・セルバンテス!(コロンビア)、アルフォンソ・フレージャー(パナマ)、イスマエル・ラグナ!(パナマ)、カルロス・オルティス!(プエルトリコ)、カルロス・エルナンデス(ベネズエラ)、ジョー・ブラウン!(アメリカ)、エディ・パーキンス!(アメリカ)、サンドロ・ロポポロ(イタリア)、ペドロ・アディク(フィリピン)、藤猛(日本)、アドルフ・プルート(アメリカ)、LCモーガン(アメリカ)等、このクラスでは非常に豪華な顔ぶれです。南米が中心ですが、北米やヨーロッパ、アジアの一流選手とも拳を交えています。
ちなみに名前の後ろのびっくりマークは殿堂入りの名王者を示していますが、ナント、5名もいます。このうち、1960年代ライト&Jウェルター級の名王者カルロス・オルティス(Carlos Ortiz)や1970年代のJウェルター級王者アントニオ・セルバンテス(Antonio Cervantes)はYouTubeでも見れるので、機会があればご覧ください。

しかし改めて見ても、ここまで世界の拳豪が居並ぶインターナショナルなファイナルレコードも滅多にないと思います。僕が確認できただけでも実に10名の新旧世界王者と対戦しています。上記の顔ぶれを見ると、正統派、ファイター、テクニシャン、ハードパンチャー、オールラウンダー、タフガイ、ジャーニーマンとまさに多士済々。この世界各国の歴戦の猛者達に対して、ローチェはほとんど判定勝利もしくは引分で切り抜けています。

下のリンク先でニコリノ・ローチェのものすごい通算成績が確認できます。
http://www.boxrec.com/list_bouts.php?human_id=010279&cat=boxer

027 アルゼンチンのアンタッチャブルさて、左の画像はローチェ本人のファイティング・ポーズです(※1)。

肩が左右に張ったガッチリとした体格に、精悍な顔つきをしています。
頭髪の薄さと胸毛が少々気になりますが、この写真ではなかなかの男前に見えます。

・・・ですがこの手の写真を見ると、いつも「中南米の人ってウチナーンチュ(沖縄の人)に似ているなぁ」と思ってしまいます。

一応、僕のまわりにもローチェのように彫りが深くて体毛が濃くてゴツゴツした人が何人かいます。
個人的になんとなく見覚えのある顔です(^^;)


・・・それでは、ローチェが実際にどんなボクサーなのか、YouTube動画で確かめてみましょう。
試合のダイジェスト映像が2本あったので、両方とも紹介してみます。

残念ながら両方の動画とも画質は悪いですが、それでも上体(特に腕・肩・肘)の使い方、目や防御勘・距離感の良さ等が伺えます。
ステップワークで微妙な距離を保ちながら、ウィービング、ダッキング、ボビング、スウェー、ブロッキング、パーリー、ヘッドスリップ・・・等々、主に上体を中心とするあらゆるディフェンス技術を駆使しています。その上体の動きと密接に連動する腰や股関節、膝などの下半身の動きも見逃せません。
体全体がスムーズに動いてリズムのあるディフェンスを構築しており、相手にロープやポストまで押し込まれてもリズミカルで巧みなディフェンス技術を発揮しています。

そしてそれらのディフェンス要素の合間を縫って絶妙のタイミングで放たれる左ジャブや左フック、右アッパーが非常に効果的です。

ディフェンス主体と言っても決してネガティブに逃げるのではなく、常に相手の出方を伺いながら抜け目のない老獪なボクシングを展開するところにローチェの良さがあると思います。
緊迫した試合中に時折見せるトボけた仕草やノーガードのサービスも彼ならではでしょう。

まず、最初の動画では、1971年12月11日に行われたアントニオ・セルバンテスとの防衛戦の他、世界戦数試合が一つのダイジェストとしてまとめられています。場内の熱狂的な「ニコリノ・コール」及び「アルゼンティナ・コール」とスペイン語の実況がまた独特の雰囲気で、気分を盛り上げます。
派手なKOシーンを期待している方はガッカリされるでしょうが、一応だまされたと思って観てみてください。ローチェ独特のキレのあるディフェンステクニックをご堪能いただけます。
ホンの一瞬ですが、あの猛攻のセルバンテスを相手に、両腕を後ろにまわして上体のみで攻撃をかわすのには驚かされました。

「Nicolino Locche - The Untouchable!」

リンク先:http://www.youtube.com/watch?v=3LEKHMUCh8k


もう一つの動画はノンタイトル戦を中心としたダイジェストです。上の動画と一部かぶっている部分もありますが、非常に興味深いので掲載してみました。

この動画で特に見てほしいシーンは、4分32秒頃に見せるいわゆる「スリッピング・アウェイ」と呼ばれるディフェンス技術です。相手のパンチが顔に当たる瞬間、パンチの軌道に合わせて首を即座に回転させて被弾を免れるもので、現在でもファンをうならせる高等技術ですが、ローチェは今から40年ほど前にこれを難なくこなしています。

「Nicolino Locche Amazing fighter boxer classic」

リンク先:http://www.youtube.com/v/-5LawOFFXvo&feature=related


いかがでしたか?
最初の動画では、万能王者のセルバンテスの鋭い攻撃をピョコピョコとしたユーモラスな動きでかわすローチェの超絶技巧とともに、筋骨隆々のセルバンテスと全く冴えない風貌のローチェとの対比も楽しめます(^^)
その他の試合でも信じられない動きをしていますよね。ホント見ていて楽しいです。

相手のディフェンスを翻弄する攻撃は古今東西で頻繁に見られますが、相手の攻撃を翻弄するディフェンスは滅多に見られません。ローチェはそのカラフルな防御術で相手の猛攻を もてあそんでいます。

027 アルゼンチンのアンタッチャブル左の画像は、1973年3月17日の対セルバンテス第2戦の様子です(※2)。
念のため、白いトランクスがローチェで黒いトランクスがセルバンテスです。
一見ローチェが押し込まれているように見えますが、決して被弾しているのではありません。セルバンテスの猛烈な攻撃をロープ際で巧みにさばいてるんです。

残念ながらこの試合では、ローチェが瞼の負傷によりTKO負けを宣告されてしまいましたが、試合内容は一進一退の白熱した技術戦となりました。
超一流のディフェンスと超一流の攻撃が交錯するスリリングなボクシングはすばらしいの一言です。


さてさて、動画をもう一つ。ローチェが世界タイトルを獲得した1968年12月12日の対藤猛戦第9ラウンドです。
先ほどのダイジェストに比べると、遥かに攻撃的なローチェが見れます。

「NICOLINO LOCCHE VS PAUL FUJÍ」

リンク先:http://jp.youtube.com/watch?v=DQjBDsHOpv4&feature=related


027 アルゼンチンのアンタッチャブル

027 アルゼンチンのアンタッチャブル上と左の画像は、同じく藤猛との世界戦の様子を写したものです(※3、※4)。
ローチェと藤、世界戦ならではの両者の張り詰めた緊張感がヒシヒシと伝わってきます。

この試合では藤のプレスと左右フルスイングがことごとく不発。逆にローチェの小刻みな左ジャブやフックがおもしろいように当たります。
最後は藤のギブアップで9ラウンド終了TKOとなり、見事ローチェが世界タイトルを獲得しました。

動画では、地元日本代表選手の敗北ということで残念な空気感が伝わってきますが、技巧派が強打者を完封した典型的なケースとして後世に語り継がれる試合となりました。


・・・ということで、ニコリノ・ローチェ特集、いかがだったでしょうか。


今回はニコリノ・ローチェの記事ですが、日本代表選手の藤猛がやられっぱなしなのもなんとなく後味が悪いですよね(^^;;)

・・・そこで、最後に1967年4月30日の藤猛のタイトル奪取試合(サンドロ・ロポポロ戦)をリンク先だけ紹介しておきます。
この試合も非常に良い試合で、カッコイイ藤猛の猛烈な強打を見ることができます。上でローチェ戦と見比べてみるのもイイかもしれません。同じ技巧派相手でも全く違う結果なのが非常に興味深いです。

「Takeshi Paul Fuji KO2 Sandro Lopololo」
リンク先:http://www.youtube.com/watch?v=vPPujvw2sdk

画像出典
※1:http://en.wikipedia.org/wiki/Nicolino_Locche
※2:http://www.magicasruinas.com.ar/revistero/esto/revdesto204.htm
※3:http://es.wikipedia.org/wiki/Nicolino_Locche
※4:http://articulos-interesantes.blogspot.com/2005/09/en-este-rincn-nicolino-locche.html

※ 画像及び動画提示については、ニコリノ・ローチェのすばらしさを皆さんと共有するために、あくまでも紹介の範囲内で行っています。もし不都合が生じる恐れがあればすぐに削除しますので、お手数ですがご指摘のほど、よろしくお願いします。(文中敬称略、文章等修正:2009.1.26、2009.3.11、2010.12.30)


(以下、追加記事2007.12.27)
027 アルゼンチンのアンタッチャブル左の画像はアメリカのボクシング専門誌「The RING」の1994年5月号92ページ特別版で、僕がその当時手に入れたものです。読みすぎてボロボロですね(--;;)
この号では、歴代の偉大なファイター達を17階級別にそれぞれ5位まで、ランク付けしています。

表紙は、左上からヘンリー・アームストロング(フェザー、ウェルター、ライト)、モハメド・アリ(ヘビー)、シュガー・レイ・ロビンソン(ウェルター、ミドル)、フリオ・セサール・チャベス(Jライト、ライト、Jウェルター)、ロベルト・デュラン(ライト、ウェルター、Jミドル、ミドル)です。ボクシングファンには説明不要の名王者達です。

027 アルゼンチンのアンタッチャブルジュニアウェルター級を見てみると、残念ながらローチェは5位以内には入ってませんが、注目選手に名前が記されています。
ちなみに、同級の上位5選手は上から順に、フリオ・セサール・チャベス、アーロン・プライヤー、バーニー・ロス、アントニオ・セルバンテス、ジャック・キッド・バーグという豪華な顔ぶれです。



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